我が国の自動車保有台数は令和3年12月末現在で8千万台を超えており、国民の生活や経済の発展における役割は、ますます重要なものとなっている。
その一方で、昨年の交通事故による死者数は2,636人、負傷者数は約36万人と、依然として多くの方が被害に遭われている状況が続いている。また、今や国産メーカーの製造する乗用車の約9割に衝突被害軽減ブレーキが搭載されるなど先進安全技術を搭載した自動車が急増しているが、搭載されたカメラ・センサーなどの電子制御装置に故障や不具合が発生し、予期せぬ事故やトラブルにつながった事例もある。さらに環境面においても、カーボンニュートラルをはじめとした地球温暖化対策等への配慮が必要な状況である。
このようなことに鑑み、自動車の使用者には自動車の適切な点検・整備の実施が義務付けられているが、それが使用者に十分理解されているとは言えず、例えば定期点検整備の実施状況は乗用車で6割程度に留まっている。また、大型トラックでは、重大事故につながりうる車輪脱落事故が多発・増加するといった深刻な状況が続いており、大型バスにおいても、少数ではあるものの依然として車両火災事故が発生している状況である。さらに、令和4年4月23日に北海道において、観光船の海難により乗員乗客が行方不明、死亡するという大変痛ましい事故が発生した。自動車運送事業においても、輸送の安全の確保が最大の使命であることを改めて確認し、車両の点検整備を確実に実施することが求められている。
これらを踏まえると、自動車の安全確保のための予防的な点検・整備が確実に実施されるよう、啓発を行っていくことが重要である。したがって、「不正改造車を排除する運動」など他の運動等との連携を図った相乗効果をねらいつつ、関係省庁や自動車関係団体等の協力を得て「自動車点検整備推進運動」を実施し、使用者に点検・整備の必要性や重要性を十分理解してもらうための取組を、全国的に展開することとする。
国土交通省、自動車関係31団体で構成する「自動車点検整備推進協議会」(以下、協議会)及び自動車関係15団体で構成する「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る連絡会」(以下、連絡会)が中心となって、内閣府、警察庁及び環境省の後援並びに独立行政法人自動車技術総合機構、軽自動車検査協会及び独立行政法人自動車事故対策機構の協力のもとに本運動を実施する。
本運動は1年を通して実施するものとするが、特に令和4年9月1日(木)から9月30日(金)までの1ヶ月間を全国統一強化月間とし、これに加え、他のイベントと開催時期を合わせるなど地域の実情や効果の得られる時期等を考慮して各地方運輸局(沖縄総合事務局を含む)又は各運輸支局(神戸運輸監理部兵庫陸運部及び沖縄総合事務局陸運事務所を含む)ごとに地方独自強化月間を1ヶ月間設定し、各取り組みを強力に推進する。
各地方運輸局又は各運輸支局は、上記1.に加え、地域の実情に応じた地方独自の取組内容を設定するよう努める。
本運動の実施にあたっては、使用者が点検・整備の必要性・重要性を認識し、自動車の保守管理意識の高揚が図られるよう、以下の実施事項に従い効果的な運動を展開する。
その際、新型コロナウイルス感染症の拡大状況に応じ、感染防止対策を十分図ったうえでイベント等の取組を実施し、必要に応じ取組内容の見直しを行う等により国民の命と健康を守ることを第一に点検整備の必要性・重要性の認識向上に努める。
協議会構成団体の地方組織は、点検・整備に関する実技講習や無料点検を実施するとともに、点検・整備を怠った場合の不具合事例、事故事例及び経済的負担事例等を交えながら、点検・整備の必要性や重要性を説明する講習会やマイカー相談等を実施し、使用者の保守管理意識の高揚を図る。
各地方運輸局及び各運輸支局等は、協議会及び連絡会構成団体の地方組織の協力を得ながら、整備不良等に起因する大型車の車輪脱落事故、車両火災事故及び車両故障を防止するため、整備管理者研修等を通じてこれらの事故の情報を展開するとともに、適切な点検・整備の励行を図る。
また、自家用自動車の整備管理者に対し、関係団体等が主催する講習会等への自主的な参加を促すよう努める。
さらに、運送事業者が選任する整備管理者に対しては、輸送の安全の確保が最大の使命であることを改めて確認するとともに、「事業用自動車総合安全プラン2025」を踏まえつつ、貨物自動車運送事業者の場合は「大型車の車輪脱落事故防止に係る令和3年度緊急対策」(以下、車輪脱落事故防止緊急対策)に基づく適切なタイヤ交換作業について、バス事業者の場合は「バス火災防止のための点検整備のポイント」や「貸切バス予防整備ガイドライン」に基づく整備管理方法について、整備管理者研修において教示する。
本省等は、国土交通省内、他省庁及び地方自治体が保有する公用車について、確実な予算確保と執行を含めた定期点検整備実施の徹底が図られるよう要請する。
各地方運輸局又は各運輸支局は、地域の実情に応じた地方独自の実施事項を企画するよう努めるものとする。